診療支援
患者説明

播種性血管内凝固(DIC)
和田英夫
(三重県立総合医療センター連携大学院講座・教授)
池田 望
(三重県立総合医療センター中央検査部)

1.現在の病状・病態

 感染症,悪性腫瘍,外傷,大動脈瘤,産科疾患などの基礎疾患では,血中に大量に流入する組織因子(tissue factor;TF)により止血系が急激に著しく活性化され,全身性の細小血管に微小血栓を形成する.その結果,血小板や凝固因子が大量に消費されるとともに,プラスミノゲンアクチベーター(plasminogen activator;PA)などにより線溶系が著しく活性化する病態を播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation;DIC)といいます.DIC発症原因の種類ならびに強さにより,微小血栓形成部位や血栓量が異なり,血小板数や凝固因子濃度の減少ならびに線溶亢進の程度もさまざまであるため,DICの病態ならびに臨床症状は症例により異なります.著しい凝固因子・血小板数の減少ならびに線溶能の亢進は,種々の出血症状を呈し,出血を制御できない場合における大出血や生命を維持する臓器の出血により,最終的には死に至ります.凝固因子・血小板数の減少ならびに線溶能の亢進がそれほどでもなく,著しい止血系の活性化が続く場合は,全身性の播種性微小血栓形成をきたし,重篤な場合に種々の臓器障害を呈し,死に至る場合もあります(図1).代表的な障害臓器は,腎臓・呼吸器・循環器系です.DICの死亡率は報告により異なりますが,感染症で約40~50%,造血器悪性腫瘍で約20~30%,その他の原因のDICでは約50~60%です1~4)

2.治療目的

 DICの治療目的は,深刻な合併症である大出血や血栓症ならびに血栓症に伴う臓器障害を防ぐ,あるいは出血や臓器障害を軽症化し,最終的には生命予後を改善することです.しかし,出血や臓器障害は急速に重篤化することもあり,事前に重篤化を予測することは難しいとされています.したがって,大出血や重篤な臓器障害を起こす可

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