診療支援
患者説明

骨髄異形成症候群に対する治療
波多智子
(長崎みなとメディカルセンター臨床検査部・部長)

1.現在の病状・病態

 骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes;MDS)は造血幹細胞に遺伝子変異が生じたことによって発症するクローン性の疾患であり,血液がんの1つです.血球の異形成,無効造血による血球減少を特徴とし,一部の症例は急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia;AML)への移行を認め,多様な病態を示す疾患群です.

 MDS患者の症状は血球減少による貧血症状,易感染性,および出血症状が主なものです.また,時に免疫異常が合併し,発熱およびベーチェット(Behçet)病様の症状やさらに好中球機能異常の関与も考えられる壊疽性膿皮症の合併なども報告されています.しかし,初期には症状に乏しく,検査値異常で発見されることもあります.

 診断のためには骨髄穿刺が必須です.骨髄液のメイ–ギムザ染色,鉄染色,細胞表面マーカー,および染色体検査を行います.また末梢血および骨髄のWT1遺伝子mRNAはMDSの診断補助および進行度モニタリングマーカーとして有用性が認められています.病型分類は,血球減少の系統数,末梢血および骨髄の芽球比率,血球異形成および染色体異常により規定されており,1982年に提唱されたFrench–American–British(FAB)分類や2001年から提唱されるようになった世界保健機関(WHO)分類が主に使われています.WHO分類は2017年に改訂されたものが最新版として使われています1)

 血液検査では,1血球系統以上の血球減少を呈します.貧血は平均赤血球容積(MCV)が100fL以上の大球性貧血であることが多く,巨赤芽球性貧血をきたす場合には鑑別すべき疾患です.末梢血および骨髄の芽球比率は20%未満です.骨髄は多くの場合は正形成ないし過形成ですが,低形成のこともあり,その場合は再生不良性貧血との鑑別が必要です.ま

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