診療支援
患者説明

ループス腎炎に対する治療
田村直人
(順天堂大学医学部附属順天堂医院膠原病・リウマチ内科・教授)

1.現在の病状・病態

 全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)は,本来は細菌やウイルスから身体を守る免疫というしくみの異常により,全身的な慢性の炎症がみられる病気です.免疫の異常により,通常は病原体などに対してつくられる抗体が,自己抗体といって自己の成分(細胞や血液中の蛋白質など)に対してつくられてしまう自己免疫疾患といわれる病気であり,SLEでは細胞の核にあるDNA・RNAやさまざまな核蛋白に対する抗体がみられます.またSLEは膠原病といわれる病気の1つでもあり代表的な膠原病です.遺伝的な素因や環境的因子が発症に関連しているといわれていますが,原因は不明です.腎臓に炎症が起こる腎炎は,SLEの約半数にみられループス腎炎とよばれます.ループス腎炎では,蛋白尿などの尿検査異常がみられ,患者さんによって重症の度合はさまざまです.可能な限り重症の度合を腎生検によって調べて,患者さんと相談のうえで適切な治療を行います.ループス腎炎の経過は個々の患者さんで異なりますが,一般的には炎症が続くと腎臓の機能が低下して腎不全となり,一部の患者さんでは透析による治療や腎移植が必要となります.

2.治療目的

 SLEによる免疫異常やそれに伴う炎症を抑えることでループス腎炎の病勢を抑え,腎臓へのダメージを極力少なくして腎臓の機能が低下することを防ぐことが目的です.具体的には,治療を開始して半年以内に蛋白尿が0.5g/日以下になると腎不全に進みにくいことがわかっています.また,SLEは治療をしてよくなったとしても,その後に再燃することがよくあります.再燃した場合はその程度にもよりますが,再度,治療の強化が必要となり,腎臓だけでなく,薬剤の副作用リスクも高まり,身体的にも精神的にもダメージが蓄積されます.したがって,再燃が起きないように十分な治療をすること

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