診療支援
患者説明

HIV感染症の検査
塚田訓久
(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター・専門外来医長)

1.現在の病状・病態

 HIV感染症は,ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus;HIV)の感染により,身体の抵抗力の一部(細胞性免疫能)が徐々に障害されてゆく疾患です.適切な治療が行われなければ,感染者の多くは数年から10年のうちに高度の細胞性免疫不全状態に至り,ニューモシスチス肺炎や結核などさまざまな日和見疾患を発症します〔この状態は「エイズ」(acquired immunodeficiency syndrome;AIDS)とよばれます〕.

 現在,あなたは表1に示すような状態にあり,HIV感染症の検査を行ったほうがよいと考えています.

2.検査目的

 現在,HIV感染症の治療は進歩しており,治療継続により良好な生命予後が期待できる疾患となっています.また,HIV感染症による免疫不全が日和見疾患発症の原因となっている場合,日和見疾患の治療だけを行って状態が一時的に改善しても,HIV感染症に対する治療が行われなければ,多くの場合日和見疾患は再度悪化し,生命にかかわる状態に至ります.このため,HIVに感染しているのであれば,できるだけ早く診断されることに大きなメリットがあります.

 HIV感染症には特徴的な症状がないため,診断するためにはHIV検査を行う必要があります.

3.検査法の概略

 検査は「スクリーニング検査」「確認検査」の2段階で行われます1).いずれも血液検査です.

 第1段階のスクリーニング検査は非常に鋭敏な検査で,HIVに感染している可能性のある人を(感染から2~3週間以内のごく早期である場合を除く)ほぼ漏れなく拾い上げることができますが,感染していない場合でも結果が陽性となってしまう(偽陽性)ことがあります.このため,スクリーニング検査が陽性であったとしても,第2段階の確認検査(精密検査)の結果をみるまで,真の感染か偽陽性かを判断す

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