疾患を疑うポイント
●中年~高齢者で発症し,起立性低血圧などの自律神経不全症が慢性進行性の経過を示す.
▼定義
1960年にShyとDragerが起立性低血圧を中核症状とする自律神経不全症を呈し,パーキンソニズム,小脳症候,錐体路症候,下位運動ニューロン徴候を伴った2症例を報告し,病理的には中枢神経に広範な変性所見を認めたことを報告した.当時は,起立性低血圧を中核症状とする自律神経不全症のうち糖尿病などの基礎疾患がないものは特発性起立性低血圧という用語でまとめられ,中枢神経病理は低酸素血症や血管障害の二次性変化であると理解されていた.彼らは中枢神経病理は一次性変性で,その結果として自律神経不全症が生じたと主張した.この報告は画期的で,一次性の神経変性に基づく自律神経不全というカテゴリーが成立したのであるが,自律神経不全が強調されていたため,その後はShy-Drager(シャイ-ドレーガー)症候