診療支援
検査

検査計画の進め方 肝・胆道・膵疾患
持田 智
(埼玉医科大学教授・消化器内科・肝臓内科/診療部長)

 肝・胆道・膵疾患の病態把握と診断,治療方針の決定には,血液などの検体検査と超音波,CT,MRIなどの画像検査が必須である.実施する検査項目を的確に選択することは,早期診断とともに,無駄なコストの削減にもつながる.目的が明確でない網羅的な検査は,医療経済的な観点からさけるべきである.このため,それぞれの検査の意義とその限界を十分に理解したうえで,診療にあたる必要がある.

 肝・胆道・膵の領域で臨床検査を行うのは,これら臓器の疾患に起因する症状,症候がみられる症例のみではない.健康診断ないし他臓器疾患の診療で行われた検査で,肝・胆道・膵疾患が疑われる場合がある.特に肝疾患は,無症状で検査値の異常を契機に受診して,診断される症例が多い.また,他臓器疾患と同様に,医療面接と身体診察が診療の基本であるが,この領域の診断学では臨床検査の意義が多大である.肝疾患では血液検査,胆道・膵疾患では画像検査の果たす役割が大きい.


Ⅰ.肝疾患における検査計画

 肝疾患を示唆する症状としては,全身倦怠感,発熱,皮膚瘙痒感などと共に,食思不振,悪心・嘔吐,腹痛,腹部膨満感,吐血・下血などの消化器症状があげられる.また,特徴的な症候として,黄疸,腹水,浮腫,肝腫大,脾腫,意識障害(肝性脳症),皮膚症状(クモ状血管拡張,手掌紅斑),女性化乳房などがある.これらがみられる症例では,スクリーニング用の肝機能検査として,血小板を含む血球検査,AST,ALT,ALP,γ-GT,総ビリルビン,直接ビリルビン,総蛋白,アルブミン,コリンエステラーゼ,総コレステロール,中性脂肪,プロトロンビン時間などを測定する.また,成因の検査としては,まず,HBs抗原とHCV抗体を測定し,腹部超音波検査を実施する.消化管出血で受診した症例では,上部・下部消化管内視鏡検査を実施するのはいうまでもない.

 一方,無症状で受診する症例は,健康診

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