診療支援
検査

検査計画の進め方 内分泌疾患
加治 秀介
(兵庫県立大学名誉教授)

 ホルモン異常症には糖尿病や骨代謝疾患などきわめて高頻度な疾患があるが,ここではそれらを除く狭義の内分泌疾患について述べる.そのなかで特に高頻度なのは10%の女性が罹患する橋本病や,高血圧の5~10%を占める原発性アルドステロン症があげられる.低頻度ながら重要な内分泌疾患も多数あり,症状や身体所見から疑うことができる疾患をできるだけ絞って,検査計画を進めることが大切である.

 内分泌疾患の多くはホルモン分泌および作用の過不足による.ホルモン分泌・作用の異常を知るためには早朝・空腹時の安静臥床で測定する血中ホルモン基礎値がスクリーニングとして重要である.しかしその解釈には各ホルモンのリズムや調節機構,性差,年齢などの特性の違いを考慮する必要があり,病態・局在診断のための検査として負荷試験をはじめ各種内分泌機能検査や免疫学的検査,画像検査,細胞・組織病理学検査,遺伝子検査を計画して,的確な治療やケアにつなげていく必要がある.

 腹部CTや頸動脈エコーなどでたまたま発見される内分泌腺の偶発腫瘍はホルモン分泌および作用の過不足がない非機能性内分泌疾患が多いが,検査により機能異常のある内分泌疾患を除外しておく.


Ⅰ.内分泌疾患を疑う臨床症状

 内分泌疾患では身体的特徴が現れ,検査計画の方針につながりやすい疾患も多い.ホルモン機能の過不足から生じる代表的な内分泌疾患の特徴的な症状を表25にまとめた.血圧の高低,倦倦怠感,易疲労感,体重の増減,食欲不振,筋力低下など非特異的な症候以外に特徴のない場合は非内分泌疾患との鑑別が重要である.また内分泌疾患でも共通の症状を呈する場合,たとえば倦怠感,易疲労感のような症状であれば,下垂体,甲状腺,副腎の各機能低下症が疑われ,鑑別が必要となる.以上のように一見して疑うことができる場合から,想定しないと見落としてしまう場合まであり,詳細な問診・身体診察に続く

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