基準値
・全血Hg濃度:5μg/dL以下
・尿中Hg濃度:2.5μg/dL以下
・毛髪中Hg含有率:5μg/g(ppm)以下
測定法 原子吸光法
検体量
・全血0.5mL
・尿1mL
・毛髪0.1g
日数 5~10日
目的 Hg中毒の診断
Decision Level
●高値
[高頻度]Hg汚染魚介類多食者,Hg含有医療品常用者,Hg工場勤務者 [対策]曝露環境の整備や離脱を考慮する.状況に応じた支持療法や合併症への対応とともにジメルカプロールなどの金属キレート剤を用いる.活性炭は吸着力が弱い.血液透析,腹膜透析,そして血漿交換の有用性は不明であるが,必要に応じて行われている
NOTE 労災認定の参考値として,アルキル水銀(メチル水銀など)濃度として毛髪中では5.0μg/g,血中では20μg/dLとされている.
異常値のでるメカニズムと臨床的意義
Hgは日常生活において広く存在している.1日に平均8.4μg摂取しているとされ,耐容摂取量は1日当たり24μg(体重50kg)である.尿や便で排泄されるが,毛髪も排泄先の一部であり,血中濃度の250倍に濃縮される.Hgは過度に体内に蓄積するとSH基などと結合し,酵素,細胞膜,輸送系,構造蛋白の障害を生じてさまざまな症状を呈する.Hgには無機Hgと有機Hgとがあり,無機Hgはさらに常温で液体のHg単独である金属Hgと水銀塩に分けられる.これら3者ともに毒性を有する.
金属Hgは揮発性が高いため主に吸入により吸収され,体内では血液脳関門(BBB)を通過する.主として尿中へ排泄されるが半減期は30~60日と長い.このため,吸入の場合には肺障害,中枢神経障害そして腎障害が主体となる.金属Hgが経口摂取された場合の腸管からの吸収は少ない.Hg電池や消毒薬に使われる無機水銀塩は消化管から吸収され,また正常の皮膚からも吸収される.脂溶性が低いためにBBBを通過しにくい.排泄