診療支援
検査

肝炎ウイルスマーカーの選択基準
内田 義人
(埼玉医科大学・消化器内科・肝臓内科)
持田 智
(埼玉医科大学教授・消化器内科・肝臓内科/診療部長)

異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 肝炎ウイルスの検出には,近年の分子生物学的手法によるウイルスの検出と抗体系の検出が主流である.ウイルスマーカーの選択には以下の①~④などの状況により用いるウイルスマーカーが異なる.①病因ウイルスの検索.②病態把握のためのウイルス動態の検討.③治療方針決定のためのウイルス測定.④治療効果判定のためのウイルス動態の検討.

 また,肝炎ウイルスには各種のウイルスマーカーが存在している.各ウイルスマーカーの臨床的意義を表173,病期・病態に応じたウイルスマーカーの選択基準を表174に示す.

 各肝炎ウイルスの抗原・抗体系はELISAで測定されることが多い.HBV-DNAとHCV-RNAの定性,定量測定はPCR(リアルタイムPCR)法によって測定される.

●急性肝炎

 急性肝炎が疑われる場合は,IgM型HA抗体,HBs抗原,IgM型HBc抗体,HCV抗体,IgA型HE抗体を測定する.HBs抗原陽性者ではIgM型HBc抗体とIgG型HBc抗体の力価をみることで,急性肝炎とキャリアの急性増悪例を区別する.B型肝炎の急性増悪例ではHDVの感染をデルタ抗体の測定で確認する場合もある(現在では測定できなくなっており,わが国ではまれであることから臨床的問題になることはない).上記で陰性の場合は,感染直後である可能性も考慮して,HAV-RNA,HBV-DNA,HCV-RNA,HEV-RNAなどをPCR法で測定する.免疫抑制状態の患者ではEBV,サイトメガロウイルスなどの抗体検査や遺伝子検査も考慮する.

●治療前の判断

・HBV:急性増悪期にはHBe抗原,HBe抗体,IgM型HBc抗体,IgG型HBc抗体,HBV-DNA量,ウイルス型(ジェノタイプ)を測定する.特に直接ウイルスを検出するHBV-DNA測定が最も有用である.

・HCV:治療前にHCV-RNA定量とウイルス型(

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