診療支援
検査

D型肝炎ウイルス〔HDV〕《デルタ肝炎ウイルス》  
hepatitis D virus《hepatitis delta virus》
中尾 将光
(埼玉医科大学・消化器内科・肝臓内科)
持田 智
(埼玉医科大学教授・消化器内科・肝臓内科/診療部長)

基準値 HDV-RNA:陰性


測定法 HDV-RNA:RT-PCR


検体量 血清0.5mL


日数 HDV-RNA:7~14日


目的 D型肝炎ウイルス感染の有無


NOTE‍ 保険適用:デルタ肝炎ウイルス抗体の測定は,HDV感染のスクリーニング検査として行われていたが,2003年に検査試薬の製造が中止になって以降,検査受託企業も受託を中止しているため,保険適用(330点)があるものの,実際には測定が困難な状況である.よって,HDV感染の診断はRT-RCR法により血中のHDV-RNAを検出する方法が基本となるが,これは保険適用がなく,検査受託企業へ依頼するか,各施設の研究室で測定されている.


Decision Level

 HDVはHBVをヘルパーとする不完全ウイルスであるため,HDV感染症の診断の前提として,B型肝炎の診断が行われている

●陽性

[高頻度]HDVの感染持続 [対策]慢性化した場合の治療はIFN療法ないしペグインターフェロン(PEG-IFN)療法となるが,その著効率は10%以下と低い.また,劇症化した場合には肝移植が唯一の治療法になる.


異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 HDVは必ずB型肝炎ウイルス(HBV)感染を伴っている.両者の感染には,①HDVとHBVとの同時感染と,②HBVキャリアにHDVが感染する重複感染がある.

 B型慢性肝炎の急性増悪や重症化,B型急性肝炎の重症化ではHDVを想定して検査する.

 HDV感染症の診断には,まずHBV感染が前提であるためB型肝炎の診断を行う.

・HBs抗原(陽性)+IgM型HBc抗体(陽性):B型急性肝炎との同時感染による急性肝炎

・HBs抗原(陽性)+IgM型HBc抗体(陰性~低力価陽性):B型キャリアないし慢性肝炎との重複感染による急性肝炎,または慢性肝炎

 有効な抗ウイルス療法は確立されておらず,B型肝炎ワクチン接種がHDV感染の予防法であ

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