診療支援
検査

前立腺酸性ホスファターゼ〔PAP〕
prostatic acid phosphatase
中村 聡
(順天堂大学大学院・泌尿器外科学)
堀江 重郎
(順天堂大学大学院教授・泌尿器外科学)

基準値 3.0ng/mL以下


測定法 CLEIA


検体量 血清0.5mL


日数 2~4日


目的 ①前立腺癌の治療後の経過観察(補助的),②PSA検査などとの組み合わせによる正診率の向上


Decision Level

●3~100ng/mL(軽度増加)

●100~1,000ng/mL(中等度~高度増加)

[高頻度]①軽度増加:早期~進行性前立腺癌.②中等度~高度増加:進行性前立腺癌 [可能性]前立腺肥大症,前立腺炎,悪性腫瘍の骨転移,骨肉腫,多発性骨髄腫,転移性肝腫瘍,膵癌,男性ホルモン投与 [対策]前立腺触診,経直腸エコー,尿道造影にて癌が疑われる場合,前立腺生検にて確定診断を行う.骨X線,骨シンチグラフィー,CT,MRIなどで病期を確定し,それに応じた治療を行う.前立腺特異抗原(PSA),γ-セミノプロテイン(γ-Sm)などの他腫瘍マーカーの測定を並行して行う


異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 酸性ホスファターゼ(ACP)はリン酸エステルを加水分解する酵素のなかで至適pHが酸性側にある酵素の総称であり,ACPは前立腺で大量に合成されているため,男性においては血中濃度のかなりの部分を前立腺酸性ホスファターゼ(PAPまたはPACP)が占める.

 PAPは,以前より骨転移を有する進行前立腺癌の診断,経過観察に用いられてきたACP中の前立腺特異分画に対する抗血清作製により解析された,分子量10万の糖蛋白であり,前立腺癌の腫瘍マーカーとして長い間使用されてきた.

 PAPを測定するには一般にRIA法のような免疫学的測定法と比色法(UV法)があるが,本法はRIA法(比色法と区別するため,便宜上こちらをPAPと呼称する)で,抗原量(蛋白量)が測定される.

 PSAが利用できる以前は,PAPが前立腺癌の病期分類に最もよく用いられた腫瘍マーカーであった.当初PAPは酵素法により測定され感度も低かったが,1970

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