基準値 遺伝子欠失を認めない
測定法 FISH法
検体量 末梢血5mL,骨髄液1mL
日数 7~10日
目的 悪性腫瘍の診断
NOTE *保険点数:分染法加算397点を1回のみ算定
Decision Level
●遺伝子欠失あり
[高頻度]大腸癌,肺癌,乳癌,胃癌,食道癌,膀胱癌,腎癌,卵巣癌,甲状腺癌,皮膚癌,頭頸部癌,脳腫瘍(特に星状細胞腫),骨肉腫,急性白血病,慢性骨髄性白血病急性転化,骨髄異形成症候群,悪性リンパ腫 [対策]TP53遺伝子の欠失は残りの遺伝子の変異を伴うことが多いため,変異の有無を解析する.TP53の遺伝子変異(点突然変異が多い)はSSCP法によりスクリーニングし,直接シークエンス法によって確認する
異常値のでるメカニズムと臨床的意義
TP53遺伝子は多くの悪性腫瘍の発症に関与する代表的な癌抑制遺伝子である.TP53は主に転写活性化能を介して,細胞周期の制御,DNA修復,アポトーシス誘導などの機能を担っている.DNA結合領域には,種の進化を通して保存されている保存領域が集中しており,同部位は点突然変異のhot spot になっている.hot spot の存在部位はexon5~8に相当する.TP53の機能はそれぞれの遺伝子座の欠落と変異により完全に失活する.TP53の機能異常は,損傷を受けたDNAが修復あるいは排除されずに複製されることを意味し,その結果細胞内に遺伝子変異が蓄積し,細胞は癌化する.
[関連する検査]
TP53遺伝子に欠失が認められた場合には,残存遺伝子の変異の有無を併せて検討することが望ましい.
判読
①検体DNAは良質のものでなければならない.②遺伝子変異は正常組織では観察されず,それだけで異常である.
採取保存
冷蔵保存.
推奨する総説
大塚和令ほか:TP53変異と分子疫学.癌と化学療法 34:683-689,2007
(三谷 絹子)
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