診療支援
検査

尿中N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ〔NAG〕   41点
N-acetyl-β-D-glucosaminidase
木村 健二郎
(JCHO東京高輪病院名誉院長)

基準値

用いる合成基質により異なる

●CPR-NAGを基質として測定した場合

・蓄尿:1.8~6.8U/日

・随時尿:1~4.2U/L,1.6~5.8U/gCr(クレアチニン1g当たりに補正した値)


測定法 合成基質を用いた反応速度法


検体量 蓄尿または部分尿1mL


日数 2~4日


目的 尿細管障害のスクリーニング(注:糸球体障害でも二次的に尿細管は障害される)


Decision Level

●1U/日以下(減少)

[高頻度]腎実質細胞の減少をきたす病態,進行した慢性腎不全 [対策]急性の尿細管障害は否定できる.病態(慢性腎不全など)に応じた対症療法

●10~20U/日(軽度増加)

[高頻度]慢性間質性腎炎,糸球体腎炎,糖尿病性腎症 [可能性]高血糖,高度蛋白尿でもこの程度の値をとりうる [対策]軽度ないし中等度の尿細管障害の可能性があり,要精査

●20U/日以上(高度増加)

[高頻度]急性ないし活動性間質性腎炎,急性ないし活動性糸球体腎炎,ループス腎炎(活動性),ネフローゼ症候群,急性尿細管壊死 [対策]急性ないしは活動性の腎障害の可能性があり,腎生検による診断も含めて入院精査を要する


異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 NAGは腎の近位尿細管のリソソームに存在する加水分解酵素でムコ多糖類や糖蛋白の分解に関与している.尿中に排泄されるNAGは近位尿細管から逸脱したもので,尿細管障害があるときにその排泄は増加する.

 糸球体疾患でも尿細管は二次的に障害されるためNAGの尿中排泄は増加する.したがってさまざまな腎障害のときに尿中のNAG排泄は増加し,それら疾患の存在と程度を推察することができる.

 尿路感染の場合,腎盂炎ではNAGの排泄は増加するが,膀胱炎ではNAGの排泄は増加しないので鑑別診断に有用.

 尿中NAG排泄が腎障害を反映しない場合があるので注意しなければならない.

 糸球体,尿細管の形態的な障害がなく

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