大動脈解離(解離性大動脈瘤)

高橋　敦彦

（日本大学短期大学部教授・食物栄養学科）

久代　登志男

（ライフ・プランニング・センター理事長・日野原記念クリニック所長）

病態

　大動脈内膜に亀裂が生じ，大動脈壁内に血液が入り込み血腫が形成され，中膜が内外の2層に解離した状態

[参考]

　大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン2020年改訂版

異常値

・白血球　基準値～基準値以上

・CRP　基準値～基準値以上

・赤沈　基準値～基準値以上

・心電図　虚血性変化(解離が冠動脈に及ぶ場合)

・胸・腹部X線　拡大した大動脈，縦隔陰影(非特異的)，石灰化(カルシウムサイン:大動脈外縁と石灰化との幅が6mm以上)，胸部で胸水，心不全

・超音波　大動脈拡大，解離腔，壁肥厚，壁在血栓，石灰化，大動脈弁閉鎖不全，エントリーおよびリエントリーの存在，心タンポナーデ

・CT(単純，造影)　大動脈拡大，解離腔，壁肥厚，壁在血栓，石灰化，エントリーおよびリエントリーの存在，ulcer like projection(血栓閉塞した偽腔の部分的欠損部)

・MRI(MRA)　大動脈拡大，解離腔，壁肥厚，壁在血栓，エントリーおよびリエントリーの存在，血流描出

・血管造影(含むDSA)　大動脈拡大，解離腔，エントリーおよびリエントリーの存在

経過観察のための検査項目とその測定頻度

　病歴・身体所見・採血・心電図・X線・超音波などから急性解離の疑いがある場合は，CTスキャン，経食道心エコーを行う．急性解離が確実な場合，Stanford A型解離では緊急手術，Stanford B型解離では保存的に扱う．急性解離が疑われる，あるいは否定的な場合は経過観察とする．

●CRP‍　[急性期]3日ごと　[回復期]1カ月ごと．解離が治癒に進めば，CRPは正常化に向かうが，数カ月にわたり異常値を示すことがある　[定期的スクリーニング]3カ月ごと

●赤沈‍　[急性期]10日ごと　[回復期]1カ月ごと．解離が治癒に進めば，赤沈は正常化に向かうが，数カ月にわたり異常値を示すことがある

●胸・腹部X線‍　[急性期]2日ごと　[回復期]1カ月

初出:臨床検査データブック 2023-2024 発行:2023年1月

収載:医学書院 医療情報サービス（2024年5月17日　掲-ID：ken_05009-23_a008b002z0026）