診療支援
検査

急性膵炎
藤井 庸平
(埼玉医科大学・消化器内科・肝臓内科)
水野 卓
(埼玉医科大学准教授・消化器内科・肝臓内科)
持田 智
(埼玉医科大学教授・消化器内科・肝臓内科/診療部長)

病態

 膵実質から逸脱した膵酵素により自己消化されている状態


[参考]

 急性膵炎診療ガイドライン2021


異常値

・血中アミラーゼ,膵リパーゼ 発症後数時間で上昇,3~4日で正常化

・アミラーゼ分画 P型が増加

・尿中アミラーゼ 血中アミラーゼ低下時も高値

・超音波 膵腫大.胆石膵炎の場合,総胆管の拡張

・CT 重症度の判定に必須(特に造影CT).膵周囲への炎症の波及と膵実質の造影不良域の存在.仮性嚢胞の形成

・MRI(MRCPを含む) 慢性膵炎・膵石や膵癌による膵管狭窄・閉塞.胆石膵炎の場合,胆管結石の存在


経過観察のための検査項目とその測定頻度

●血液検査‍ [急性期]白血球数,血小板数,Cr,LD,Ca,CRP,アミラーゼなどを連日 [回復期]3日ごと

●血液ガス‍ [急性期]連日 [回復期]3日ごと


診断・経過観察上のポイント

①成因としてアルコール,胆石,特発性,ERCP後,薬剤性などがある.②急性膵炎臨床診断基準および重症度判定基準があり(厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班,2008年),2021年に急性膵炎診療ガイドラインが改訂されている.重症例では多臓器不全症候群(MODS)を合併し,重症例では死亡率5~10% に達する.③CT,腹部超音波検査などの画像所見,血中アミラーゼ,リパーゼなどの血液検査所見が診断に有用である.特に造影CT所見は重症度判定において重要である.④診断後直ちに重症度判定を行い,重症度に応じたモニタリング,治療を行うことが大切.経過中に重症化することもあり,経時的に繰り返すことが必要.⑤十分な初期輸液,呼吸・循環動態の維持もしくは改善,十分な除痛,膵局所合併症の予防などを徹底することが治療の基本となる.⑥重症例に対する経腸栄養は合併症発生率を低下させ,生存率の向上に寄与するので,入院後48時間以内に開始する.


(藤井 庸平,水野 卓)

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