診療支援
検査

視床下部症候群
加治 秀介
(兵庫県立大学名誉教授)

病態

 視床下部機能の障害による諸症状


異常値

・思春期発来の異常 思春期発来がないか,もしくは思春期早発症〔「LH」の項,「FSH」の項,「LHRH負荷試験」の項参照〕

・摂食行動の異常 拒食もしくは過食

・飲水行動の異常 口渇感の欠如,高Na血症

・体温調節異常 高体温,低体温,恒温調節不能

・意識および睡眠異常 睡眠リズムの乱れ,傾眠

・精神症状 情動行動異常が多い

・下垂体機能低下 プロラクチン(PRL)を除く下垂体前葉ホルモン分泌低下,下垂体後葉機能異常(中枢性尿崩症,SIADH)


経過観察のための検査項目とその測定頻度

●肥満,やせの程度‍ [安定期]重症度判定目的で1~3カ月ごと

●性ホルモン(男性:テストステロン,女性:エストラジオール)‍ [安定期]重症度判定目的で3カ月ごと

●下垂体機能検査(3者,4者負荷など)‍ [安定期]下垂体機能低下症の重症度判定目的で6~12カ月ごと

●血中コルチゾール,血中FT4 下垂体機能低下の重症度,治療効果判定目的のため3カ月ごと

●頭部MRI画像‍ [慢性期]定期的観察のために1年ごと

●血清Na,血漿浸透圧‍ [慢性期]定期的観察のために1~3カ月ごと


診断・経過観察上のポイント

①視床下部障害の症状としては,視床下部性(低ゴナドトロピン性)性腺機能低下,肥満,尿崩症などが多い.性腺機能低下と肥満の組み合わせはFröhlich(フレーリッヒ)症候群と呼ばれる.②男児の性早熟は視床下部の腫瘍性病変によることが多い(腫瘍による思春期発来の脱抑制,過誤腫はLHRH産生,ジャーミノーマはHCG産生).③視床下部の障害では,下垂体前葉ホルモンのうちPRLを除く5つのホルモンは単回刺激試験で低反応,PRLは基礎値が軽度上昇しTRH試験で過剰反応,抗ドーパミン薬(スルピリドなど)負荷で反応なし.④下垂体の障害がない場合,分泌が低下した5つのホルモンは対応する視

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