病態
多能性造血幹細胞に後天的に生じたPIG-A遺伝子の突然変異によって,glycosylphosphatidylinositol(GPI)アンカー蛋白が欠損した血球が作られるため慢性的に血管内溶血,汎血球減少をきたす
[参考]
発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド(令和1年改訂版),2020
異常値
●末梢血検査 汎血球減少症.網赤血球増加(貧血の程度には見合わないことが多い)
●末梢血好中球アルカリホスファターゼ(NAP)スコア 低値
●尿検査
・尿ヘモグロビン 陽性
・尿沈渣ヘモジデリン 陽性
●血液生化学
・血清LD 上昇(特に1,2型の増加)
・血清ハプトグロビン 減少
・間接ビリルビン 上昇
・鉄 低下
・UIBC 上昇
・フェリチン 低下
●表面抗原解析 CD55・CD59(GPIアンカー蛋白)欠損白血球・赤血球の増加,fluorescent-labeled aerolysin(FLAER)陽性血球の増加
●ショ糖溶血試験,sugar-water試験 陽性(まれに陰性のこともある)
●Ham試験 陽性
経過観察のための検査項目とその測定頻度
●末梢血検査 [急性期]数日ごと [慢性期]1~3カ月ごと
●血液生化学 [急性期]数日ごと [慢性期]1~3カ月ごと
診断・経過観察上のポイント
①従来,診断時にはショ糖溶血試験,Ham試験が用いられてきたが,フローサイトメトリーによるPNH血球(CD55,CD59欠損,FLAER陽性)の確認が標準的な診断法となっている.②再生不良性貧血や骨髄異形成症候群との鑑別の困難な症例や,移行例がある.③経過中に血栓症を合併しやすい.この場合,D-ダイマー高値となる.④溶血後,鉄分が尿から喪失するため重症例では鉄欠乏を合併しやすい.⑤Hb,血清LDが溶血の程度の指標となる.⑥溶血による腎機能低下をきたしやすい.
(伊豆津 宏二)
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