病態
・ブドウ球菌は①コアグラーゼ陽性ブドウ球菌,すなわち黄色ブドウ球菌と,②コアグラーゼ陰性ブドウ球菌に分類される.
①黄色ブドウ球菌感染
・黄色ブドウ球菌は人体に侵襲性が強く,化膿性変化を起こす.
・抗菌薬感受性により,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)とメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に分類され,MRSAはmecA遺伝子をもつ.MRSAは院内感染が多いが,近年市中感染型MRSAも増加傾向にある.
・皮膚軟部組織感染,手術後創部感染,関節炎,骨髄炎,血管内カテーテル感染,人工関節感染,肺炎,感染性心内膜炎,髄膜炎,敗血症などを起こす.
・菌血症例の死亡率は20~40%である.
・各種の菌体外毒素により,toxic shock syndrome(TSST-1,Enterotoxin A,B,C,Dなどによる)や staphylococcal scalded skin syndrome 〔SSSS,Exfoliative toxin A (ETA)および Exfoliative toxin B (ETB)による〕,また食中毒による急性胃腸炎(Enterotoxinによる)などが起こる.
②コアグラーゼ陰性ブドウ球菌感染
・皮膚に常在する菌で多種類あるが,表皮ブドウ球菌Staphylococcus epidermidisが代表的である.
・黄色ブドウ球菌に比べて一般に病原性は弱いが,人工弁感染性心内膜炎,人工関節感染,血管内カテーテル感染,脳室・腹腔内シャント感染など,人工充填物感染の代表的な起因菌である.
・人工充填物感染は菌がバイオフィルムに包まれて,抗菌薬治療にしばしば抵抗性になる.
・メチシリン耐性菌が80%以上である.
・Staphylococcus lugdunensisはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌分離菌中で3%の頻度であるが,侵襲性が黄色ブドウ球菌に劣らずに強く,各