診療支援
検査

腸チフス
古川 恵一
(国保旭中央病院・感染症センター長)

病態

・チフス性疾患Enteric feverは発熱など強い全身症状を伴い腹痛などを呈する感染症である.腸チフス菌Salmonella enterica serotype Typhiの感染による場合を腸チフス,パラチフス菌Salmonella enterica serotype Paratyphi Aの感染による場合をパラチフスという.

・東南アジア,インド,中東,アフリカ南部などで多い.日本でも輸入感染があり,2021年には腸チフス4例,パラチフス0例であった.

・チフス菌,パラチフスA菌は通性嫌気性グラム陰性桿菌で腸内細菌科サルモネラ属に属する.

・汚染された水,飲食物から経口感染する.潜伏期は5~21日(多くは14日前後)で,小腸のリンパ組織に感染し,リンパ行性,血行性に全身に播種する.

・臨床症状は発熱(75%),腹痛(20~40%),下痢(50%),便秘(10~38%),発疹(バラ疹:30%),全身倦怠感,頭痛,筋肉痛,意識障害,昏迷,肝脾腫(50%),相対的徐脈(50%)など.合併症は腸穿孔(無治療で3~10%),腸出血,敗血症性ショック,DIC,肝脾膿瘍,感染性心内膜炎,腹腔内膿瘍など.

・死亡率は2%(無治療では15%以上).


異常値

・培養 血液培養陽性(50~70%),便培養陽性(30~40%),骨髄穿刺液培養陽性(90%以上)

・白血球数 正常または低下(左方移動,好中球減少,好酸球低下を認めることがある).時に初期上昇

・貧血

・AST,ALT,LD 上昇

・CRP 上昇

・肝脾腫

・ウィダール反応 過去の感染で陽性になりうるが,特異性が低い


経過観察のための検査項目とその測定頻度

・血液検査 血算,生化学,CRPなどを週2~3回

・便培養 抗菌薬治療後,陰性を2回確認


診断・経過観察上のポイント

①抗菌薬治療は1)セフトリアキソン2gを12~24時間ごと14日間,または2)アジスロマイ

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