診療支援
検査

アメーバ症(赤痢アメーバ症)
髙橋 優三
(岐阜大学名誉教授)

病態

 アメーバと名前がつく真核の単細胞生物(原虫)は地球上に無数の種類がある.そのなかでもヒトに寄生するアメーバはごく少数で,さらに腸管に寄生して赤痢症状を起こさせるのは,赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)だけである.この赤痢アメーバは2分裂で増えるが,シスト(嚢子)と栄養型の2つの時期がある.シストは過酷な外的環境にも強く,経口感染時に胃液に曝されても死滅せず感染能をもつ.栄養型の時期には胃液で消化されるので,経口感染能はない.赤痢アメーバが大腸の管腔内に寄生しても不顕性感染が多い.栄養型のアメーバが腸管上皮に組織分解酵素を分泌し潰瘍を作ったときに腸アメーバ症としての症状がでる.このアメーバ感染が肝臓や肺,脳へ血行性に転移し膿瘍を形成することもある(腸管外アメーバ症).肝膿瘍は時折みられるが,肺や脳の膿瘍はまれである.この赤痢アメーバ症は,日本では男性同性愛者や各種施設利用者などに感染が広がり,海外からの輸入感染例より国内で感染した症例のほうが多い


[参考]

 寄生虫症薬物治療の手引き改訂10.2版,2020


診断

 腸アメーバ症の場合,粘血便が出て疑われ,細菌性赤痢や潰瘍性大腸炎などと鑑別診断される.

 大腸内視鏡で潰瘍が見つかった場合には,潰瘍性大腸炎と本症が鑑別診断となる.生検で潰瘍部にアメーバ虫体(虫体成分)を検出すれば診断の確定になる.

 腸管外赤痢アメーバ症は膿瘍形成であるので,発熱の他,局所炎症症状がでる.画像診断で疑い,穿刺液中に虫体を検出すれば診断は確定する.なお,赤痢アメーバ性肝膿瘍の膿汁は,チョコレート様と表現される

・糞便検査 PCR法でDNAの検出,イムノクロマト法で抗原の検出,検鏡で虫体の検出などが行われる.一般的には有形便ではシストを,下痢便からは栄養型虫体を検出する.シストの検出には,集シスト法で集めてから顕微鏡観察をする.栄養型

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