病態
慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ,記憶,思考,見当識,理解,計算,学習,言語,判断など多数の高次脳機能の障害からなる症候群.正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで,日常生活・社会生活を営めない状態となる
[参考]
認知症疾患診療ガイドライン2017
異常値
・認知機能検査 基準値より低下(MMSE 23/30点以下,HDS-R 21/30点以下など)
・頭部CT,MRI 萎縮や変性所見
・脳血流シンチグラフィー,PET 関心領域(各認知症の特有の部位)の集積低下
・一部の症例で血液検査 甲状腺機能低下,血中ビタミンB1・B12の低下
経過観察のための検査項目とその測定頻度
・認知機能検査(MMSE,HDS-R,MoCA-J,COGNISTAT,ADAS-Jcog) 数カ月に一度,または著しい症状の変化時に行う
・頭部CT,MRI 半年~1年に1回,または著しい症状の変化時に行う.変化があれば脳血流シンチグラフィーやPETも行う
・甲状腺機能検査,ビタミンB1・B12 一部の病態に甲状腺機能,ビタミンB1・B12低下が関与することがあるため,血中TSH,FT3,FT4,ビタミンB1・B12を測定する
診断・経過観察上のポイント
①アルツハイマー型認知症(AD),(脳)血管性認知症(VaD),レビー小体型認知症(DLB),前頭側頭葉変性症(FTLD)が主な疾患とされる.治療方針確立のため,診断が重要である.
②ADは認知症の最多の原因疾患であり,多くは65歳以上で発症する.記憶障害を初発とし,進行性の経過をみる.画像所見では海馬や扁桃体の萎縮,側頭葉を含めた大脳萎縮を認める.同部位の脳血流低下やPETにおいて代謝の低下を認める.病理所見として老人斑の出現(アミロイドβ蛋白),神経原線維変化(タウ蛋白)を認める.これを同定するためのアミロイドPET,タウPETが開発され