診療支援
検査

横紋筋融解症
清水 裕介
(杏林大学医学部救急医学)
山口 芳裕
(杏林大学教授・医学部救急医学)

病態

 横紋筋融解症(rhabdomyolysis)は,骨格筋細胞の壊死・融解により,筋細胞内成分のミオグロビン,クレアチンキナーゼ(CK),カリウム(K)などが大量に血中・尿中へ放出され形成される病態である.

 合併症として,高K血症,急性腎障害,DICなどがある.流出された大量のミオグロビンが尿細管を閉塞し,急性腎障害(acute kidney injury;AKI)を併発することが多い.また,循環血液量減少に伴うショックや高K血症により突然の心停止をきたす危険性がある.

 原因は外傷性と非外傷性に分けられる.外傷性では,四肢や体幹部の横紋筋が長時間圧迫を受け,それに続発してAKIや高K血症,代謝性アシドーシスをきたす病態を挫滅症候群(クラッシュ症候群:crush syndrome)という.大地震などの災害時には念頭におくべきである.一方,非外傷性の原因としては,フィブラート系やスタチン系の脂質異常症治療薬やニューキノロン系抗菌薬,向精神薬などの薬剤性のものが知られている.また,低K血症,糖尿病性ケトアシドーシスなどの代謝障害や,悪性症候群は二次的に横紋筋融解症を発症する可能性がある.

 症状としては四肢の脱力感,腫脹,しびれ,痛み,ミオグロビン尿があり,これに腎不全症状として無尿,乏尿がみられることもある.


異常値

・血液検査 血清CK,ミオグロビン,LD,AST値などの上昇.電解質異常,pH (血液ガス分析にてアシデミアとなる)

・尿検査 尿潜血陽性,尿中ミオグロビン陽性


経過観察のための検査項目とその測定頻度

●血清CK 血清CK値の上昇が筋細胞損傷の最も鋭敏かつ特異的な指標となる.通常,発症から2~12時間以内に上昇し,24~72時間以内にピークに達し,筋損傷の終息後3~5日で正常化する.血清CK値は筋損傷の重症度と相関することが知られており,5,000U/Lを超える値では,AK

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