診療支援
検査

農薬中毒
坂本 哲也
(帝京大学教授・救急医学/帝京大学附属病院・病院長)

病態

 除草剤であるパラコート,殺虫剤である有機リンなどの農薬による中毒.服毒例は多くが自殺目的だが,農薬を使用中に吸い込んだり皮膚から吸収しても生じる


異常値

●パラコート中毒

尿中パラコート定性試験 簡便かつ迅速に施行できる.1ppm以上のパラコート濃度で青色に発色するので,完全に陰性になるまで腸洗浄や血液吸着療法を行うべきとされている

血清パラコート濃度 パラコート中毒の予後は血清濃度と摂取後の経過時間からProudfootの生存曲線によって予測できる.血清濃度が4時間後で2mg/L,6時間後で0.9mg/L,24時間後で0.1mg/L以上では死亡する可能性が高い.上記を大きく超える患者は生存の見込みがないので,患者に不必要な苦痛を与える治療は控えるべきであろう

生存率予測式 血清パラコート濃度が測れないときには,内服から採血までの時間をTとして以下の生存率予測式が提唱されている.


 {([K]×[HCO3])/([Cr]×0.088)}+399×logT


 が1,500を超えれば生存率90%,931~1,500なら生存率38%,930以下なら生存率3%とされる

血清の着色 最重症例では緑色の着色剤により血清が緑色になる

●有機リン中毒

血漿コリンエステラーゼ活性と赤血球コリンエステラーゼ活性 双方が低下する.血漿コリンエステラーゼ活性は測定が容易で,有機リン中毒の鋭敏な指標となるが,中毒症状を呈する原因そのものではないので,重症度とは必ずしも相関しない.赤血球コリンエステラーゼ活性は重症度のよい指標となり,25%以上の低下は有機リンへの曝露を示す

心電図,胸部X線 心電図で房室ブロックなどによる徐脈,農薬に含まれる有機溶媒誤嚥による胸部X線の肺炎像

有機リンおよび代謝産物 血中・尿中濃度測定は可能であるが,急性期の治療に役立つことは少ない


経過観察のための検査項目とその測定頻

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?