A.ER診療のポイント
●アナフィラキシーの0.7~2%が致死的とされ,先進国でも年間0.03~2/10万人が死亡していると推計される.死亡例の約2/3は初回発症例であり,ほとんどが発症から60分以内に死亡する劇症型である.
●ほとんどに皮膚症状がみられ,呼吸器症状,心血管症状,消化器症状が同時にみられることが多い.なかでも気道症状と低血圧症状が重症例を見分けるポイントである.症状が非特異的で個人差も大きく,喘息発作や神経調節性失神などと誤診されることがしばしばある.
●原因として小児では食物,成人では薬剤・ハチ刺症が多い.
●抗原曝露の回避,気道確保,酸素投与,太い静脈路確保と急速輸液を治療の基本とする.気道浮腫,気管支攣縮,ショックのすべてを即時的に治療できる薬剤はアドレナリン(ボスミン®薬,エピペン®薬)しか存在しないため,第一選択薬である.0.3mgを前外側大腿筋に筋注する.
B.最初の処置
1バイタルサインの把握と蘇生
①病歴や所見からアナフィラキシーショックが疑われれば,蘇生の準備,すなわち人を集め救急カートを準備する.
②バイタルサインを素早く把握し,いわゆる蘇生のABCから始める.考えられる原因物質にまだ曝露されている場合(持続静注薬など)は,直ちに原因物質の曝露を避ける(点滴回路を回収するなど).
③気道閉塞があれば,径が細めのチューブで遅延なく気管挿管を行う.
④できるだけ太い静脈路を確保し,血圧低下があればたとえ呼吸困難があっても足を高くした仰臥位とする.
⑤アナフィラキシーショックは,血管拡張による血液分布異常性ショック(distributive shock)のみならず,血管透過性亢進に伴う急速な間質浮腫による循環血液量減少性ショック(hypovolemic shock)も合併するため,頭が高い不適切な体位により意識を消失したり心室充満がなくなり心停止となることがある.
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