診療支援
治療

呼吸困難
dyspnea
志賀 隆
(Attending Physician,Department of Emergency Services,Instructor of Surgery,Harvard Medical School)

A.ER診療のポイント

●呼吸困難は,多数のシステムの異常の結果として生じる症状である.それらのシステムとは,ガス交換,肺循環,吸気呼気のフローなどの物理的側面,血流の酸素運搬能,そして心肺機能などである.呼吸困難は,体の呼吸能以上の換気の需要が起こることで生じる.酸素の需要と供給の不一致,二酸化炭素の排出能と産出の不一致で呼吸困難の感覚が生じる.

●以上より,気道・肺・心原性だけでなく敗血症,貧血や神経疾患,そして中毒など,広い鑑別診断のリストを持っていることが必要となる.

●緊張性気胸は外傷だけでなく,内因性でも起こり,COPD(chronic obstructive pulmonary disease)の既往のある患者もおり,緊張性気胸があるかないかを常に考えて初期のアセスメントをすることが必須である.

●気道に問題があると初期のアセスメントでわかった場合には,気道確保がいつでもできるように素早く準備をすることが必要である.

●急性のCO2増加に対して酸素投与することで呼吸が止まることはあまりない.もし慢性的にCO2が溜まっている患者が低酸素状態になっている場合にはBiPAPもしくは気管挿管をして人工呼吸管理下で治療することが望ましい.

●重症の喘息やCOPDでは換気が少なくなり喘鳴が聞こえなくなってくる.喘鳴の有無だけでは重症度は判断できない.

●初発の過換気症候群の場合は,糖尿病性ケトアシドーシスがないか,Guillain-Barré症候群ではないか,敗血症はないか,など慎重を期すことが望まれる.ペーパーバッグは低酸素血症を起こす可能性があり勧められない.


B.最初の処置

1バイタルサインと簡単な病歴聴取

 モニター装着し,静脈確保をした後,前述のように気道の異常がなく,酸素化が保たれていることが確認できれば,病歴聴取に移ることができる.気道や酸素化・呼吸パターンに明らかな問題があれ

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