診療支援
治療

咳嗽
cough
岩瀬三紀
(トヨタ記念病院・副院長)
杉野安輝
(トヨタ記念病院・呼吸器科部長)

A.ER診療のポイント

●咳嗽は爆発的に生じる呼気現象であり,気管および気管支の分泌物や異物を排泄するための防御反応でもある.咳は随意的にも反射的にも生じ,防御的な反射路の求心路は三叉神経,舌咽神経,上喉頭神経,迷走神経の知覚枝である.一方,遠心路は反回神経,脊髄神経である.

●咳嗽や痰などの呼吸器症状で救急受診する患者は多く,特に冬季には多い.大多数はウイルス性の上気道炎や気管支炎などの軽症患者であるが,急性肺炎(結核も含む)などの重症患者を見逃すことは避けなければならない.

●咳嗽の持続期間が問診上では重要となる.8週以上持続する慢性咳嗽および3週以上の遷延性咳嗽と3週未満の急性咳嗽に分けて,鑑別診断を進めることは非常に有用である.発熱を伴い発症して時間があまり経ってない場合は,急性感染症の可能性が高い.一方,咳が1か月以上持続している場合には感染症以外の疾患を鑑別診断に挙げる.ただし,慢性および遷延性咳嗽が初期には急性咳嗽として発症することは留意すべきである.

●湿性咳嗽か乾性咳嗽の鑑別も重要な情報.

●小児では気道異物の可能性を念頭に置く.


B.最初の処置

1バイタルサインと病歴聴取のコツ

①バイタルサインは重症者の選別に有用であるが,75歳以上の市中肺炎の患者においては,38℃以上の発熱はわずか30%,脈拍が100/分以上は37%であったとの報告もあり,バイタルサインだけでは高齢者の急性呼吸器症状の評価は困難である.

②「いつもと違う」「いつもより元気がない」などの家族からの言葉が参考になるし,寝汗や筋肉痛などの呼吸器以外の症状の有無が重要であり,Heckerlingスコア(表1)やDiehrのスコア(表2)合計数が高ければ胸部X線を撮るべきである.

③一般的にはインフルエンザ,RSウイルスは冬季に流行がある.特に高齢者においては持続する湿性咳嗽の頻度が高い.

④オウム病における鳥

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?