診療支援
治療

腹痛
abdominal pain
井 清司
(熊本赤十字病院・救命救急センター長)

A.ER診療のポイント

●頭痛や胸痛と同じように,腹痛の患者の場合も緊急度の高い疾患から考える.

●重症度・緊急度が高い場合は,緊急処置が診察に優先する(⇒本項B参照).

●患者を見たときの第一印象が重要である.たとえば,一人で歩けず家族に支えられ,顔色不良(蒼白,土気色,冷汗),頻呼吸,意識低下や不穏状態,などは緊急のサインである.

●腹痛をきたす疾患は腹腔内の臓器だけとは限らない.腹部に隣接する部位(後腹膜,胸部)や全身の疾患でも患者は「腹痛」と訴える場合もある(図12).

●腹腔内の疾患でも,時に肩や背中,大腿部などに放散痛や関連痛をきたすことがある(図3).

●手術や入院,内視鏡的検査や処置が必要なら各科専門医へ確実にコンサルテーションする(本項D-2を参照).

●痛みの場所を上下,左右の4分割にして考えるとすると鑑別すべき疾患を考えやすい(図12).

●年齢と性別を意識し,腹痛をきたす疾患を重要なものから考えていく.小児,高齢者,女性などは特に注意を要する.それぞれのグループに重要な疾患を頭にいれて診察に当たる(図4).

●妊娠可能な年齢の女性については,詳しい月経歴の聴取と妊娠反応がポイントである(図5).

●ERに来院する腹痛患者はNSAP(non specific abdominal pain;診断が不明な腹痛患者)が40%前後あるので,帰宅させるか,入院させるか判断することは重要である(⇒本項D-3参照).


B.最初の処置

①緊急を要する患者の場合は,医療スタッフを呼び集め,緊急処置室にて,バイタルサインを測定し,心電図・酸素飽和度モニターを開始し,酸素投与を開始,静脈路を確保し輸液を開始する.低酸素やショック状態なら,酸素をリザーバー付マスクで5~10L投与開始する.

②ショック状態なら輸液路を全開にして1~2L投与開始する(小児の場合は20mL/kg).採血・

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