診療支援
治療

浮腫
edema
森下由香
(手稲渓仁会病院救命・救急科副部長)

A.ER診療のポイント

 浮腫とは細胞間隙に過剰に液体が貯留した状態のことで,皮膚や粘膜のような体表組織のみならず,生体のほとんどの部位や臓器組織にも発生する.ER診療の視点から浮腫を考える場合,患者側から観察できる皮膚・皮下組織や体表近くの粘膜組織に生じる浮腫で,急性に(通常は数日以内に)発症したり最近悪化してきたものが問題になる.

 浮腫そのもので緊急性の高いものは気道の浮腫をきたす病態のみである.その他の緊急を要する病態は,浮腫の原因となっている全身疾患などにより意識の異常や呼吸不全,循環不全がみられる場合で,全身状態の安定に加え原疾患の治療が必要となる.また,全身状態に異常はないが,救急受診時に見落としてはならない病態もあり,注意深く鑑別する.

1上気道閉塞に至るような浮腫

 顔面,口腔内,咽喉頭の浮腫症状を訴える患者では,数時間以内に上気道閉塞に至るような重篤な浮腫をきたす場合があるため,緊急の気道確保(気管挿管,外科的気道確保)を考慮に入れる.

2循環不全症状

 特に,急速に進行する全身性の浮腫がみられる患者はアナフィラキシーなどに伴いショック症状をきたしている場合がある.

3呼吸不全症状

 心不全や腎不全,肝硬変が背景にある患者などは,全身性の浮腫に伴い,肺水腫をきたしている場合がある.

4浮腫の背景にある全身的な病態

 浮腫自体は緊急治療を要する症状ではなく,安易な利尿薬の投与はかえって全身病態を増悪させることもあるため,「むくみ軽減処置」としての対症療法の開始を急ぐ必要はない.ER診療では,背景にある全身病態を鑑別し,適切な専門的治療へと導くことを意識する.

5ERで見逃してはいけない疾患

 上記1~3に当てはまるような病態はもちろんだが,心不全・腎不全・肝不全の悪化,敗血症や深部静脈血栓症が浮腫の原因となっている場合もある.


B.最初の処置

 まず,バイタルサインの異常を察知し,こ

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