診療支援
治療

腰痛
lumber pain
輿水健治
(埼玉医科大学総合医療センター教授・救急科(ER))

A.ER診療のポイント

●腰痛はERで遭遇するありふれた症状で,多くの場合,筋・筋膜あるいは骨格系に由来し,対症療法で対応可能なことが大半である.

●しかし,内科的疾患が原因のこともあり,整形外科領域の疾患も含め,ERでの緊急処置や速やかな専門医へのコンサルテーションを必要とする疾患が紛れ込んでいることもある.

●したがって,まず緊急度が高い疾患や命にかかわる疾患を除外することが大切.以下に注意すべき疾患を列記する.

 ①大動脈疾患

 ②炎症性疾患(感染症,化学性炎症)

 ③神経症状(下肢の筋力低下,知覚障害など)を呈するもの

 ④悪性腫瘍


B.最初の処置

1蘇生処置の必要性

 大動脈瘤の破裂では,分単位で急激なショック状態に陥ることも多い.腰痛だけの訴えで腹部大動脈切迫破裂の症例もあり,またwalk-inの患者が来院後に急変することもある.蘇生処置が必要になることもあり,救急カートは常に整備しておく必要がある.

2静脈路確保の必要性

 すべての腰痛患者に静脈路を確保することは現実的ではない.以下に静脈路を確保すべき徴候を示す.

 ①第一印象で重篤感(苦悶様表情,冷汗,顔面蒼白など)

 ②ショック状態

 ③意識レベルの低下

 ④四肢の血圧較差

 ⑤収縮期血圧が200mmHg以上

 ⑥発熱(採血と同時に実施)

①から⑤の場合は,できれば18G以上の太い静脈留置針で静脈路を確保し,特にショック状態では2ルート確保することが望ましい.⑥の場合でも造影CT実施の可能性があり,20G以上の太さで確保する.

3採血の必要性

 血液検査もすべての患者に実施する必要はない.静脈路確保すべき徴候と同様に,上記①から⑤に該当するときは,通常の血液検査とともに血液型と輸血用交叉血も含めて採血する.⑥の場合は白血球数(できれば分画),CRPなど炎症反応,筋・骨格系の逸脱酵素などをチェックするが,後に造影CTが必要になることもあり,腎機能の

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