診療支援
治療

急性膵炎
acute pancreatitis
真弓俊彦
(一宮市立市民病院・救命救急センター長)

A.疾患病態の概要

●最重症の急性膵炎は現在でも50%を超える死亡率を示す急性疾患.初期には軽症でも急激に重症化し死に至る場合もあり,発症から3日間の治療が予後を左右する.

●診断基準,重症度判定基準が2008年10月に改訂されたので,それに従って診療にあたる.急性膵炎に対する基本的治療方針を表1図1に示す.


B.最初の処置

①重症例ではバイタルサインをチェックするとともに直ちに呼吸循環管理を行う.

②腹痛を訴えてwalk-inで来院した患者の場合,特に,背部痛や胆嚢・胆管結石を伴う場合,激痛で腹部を曲げて坐位をとる場合,飲酒家や急性膵炎の既往がある場合には,急性膵炎も念頭に置いて診察にあたる.血球検査,血液生化学検査を行うとともに輸液を開始し,腹部などの理学所見をとる.


C.病態の把握・診断の進め方

1確定診断に近づくための観察・検査

①診断基準(表2)に基づき診断を行うが,採血では可能であれば,より感度,特異度が高いリパーゼを測定する.リパーゼが測定できない場合にはアミラーゼを測定するが,アミラーゼは感度,特異度ともに劣ることを念頭に置く.

②腹部超音波検査で胆嚢・胆管結石の有無を確認する.これらが認められ,胆道系酵素の上昇を伴う場合には,胆石性膵炎を念頭に置く.また,膵の腫大や腹水,胸水貯留の有無も可能な範囲で確認しておく.他の急性腹症の除外や胸水の有無の検索のため,胸部/腹部X線を撮影する.

③急性膵炎が確診できない場合や重症度判定のためには,造影CTを施行するが,重症患者に対応できない施設では造影CTは施行せず,重症度を予後因子スコア(表3)のみで判定し,重症例であれば直ちに搬送を検討する.


D.引き続き行う処置

 急性膵炎の早期死亡原因は,血管透過性の亢進に伴う循環不全である.急性膵炎を疑った段階から輸液を早め,診断した場合には早期から十分な輸液やモニタリングを行う.

 診断後

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