診療支援
治療

腹膜炎
peritonitis
武田宗和
(東京女子医科大学講師・救急医学)

A.疾病・病態の概要

●原因として原発性と続発性に大別される.原発性腹膜炎は腹腔内に感染源がないもの.特発性腹膜炎ともいう.臨床的にはまれであるが,腹水を伴った肝硬変患者に合併して発症すると予後不良である.治療は抗菌薬による保存的治療が中心となる.

●続発性腹膜炎は,腹腔内臓器から細菌,消化液が流出して腹腔内を汚染することによって発症する.二次性腹膜炎ともいう.基本的に化学的刺激や細菌感染によって発生する.発生頻度は圧倒的に続発性が多い(表1

●腹膜へ炎症が波及すると腹膜表面の毛細血管が拡張し,血漿成分が腹腔内に滲み出し腹水の増加をきたす.

●炎症がさらにびまん性に拡がると,腸管の浮腫・麻痺が生じ,腸内容の停滞と腸管壁から腸管内への細胞外液の漏出が起こり,腸管内に大量の水分が貯留する.

●上記に腹膜の浮腫が加わって,体液喪失が著しくなると循環血液量減少性ショックに陥る.穿孔により腸内細菌などグラム陰性桿菌による細菌感染を合併すれば,敗血症性ショックに陥る.

●炎症が腹腔全体に広がると急性汎発性腹膜炎となり,局所にとどまれば限局性腹膜炎となる.その場合は,腹腔内膿瘍を形成することもある.


B.最初の処置

 腹膜炎の多くは外科的急性腹症である.急激に発症し全身状態が増悪する傾向にある患者にあっては,診断を確定するよりも手術を含めた緊急処置を要する病態かどうかを判断することが重要である.

①診察開始時から視診に基づいた第一印象を大事にして全身状態を把握する.まずは,生命を脅かす生理学的徴候の異常の把握を行う.蘇生のABCに従って,「A:気道」,「B:呼吸」,「C:循環」の評価を血圧,脈拍,呼吸数,体温,酸素飽和度の確認とともに行う.続いて,意識状態や体位(膝を曲げてじっとして動かされるのを嫌がるなど),顔貌(顔面蒼白)・表情を確認する.

②意識レベルが悪い時(JCS 30もしくはGCS 8以下)

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