A.疾患・病態の概要
●急性腎不全は,数時間~数週間の間に腎機能が急激に低下して生体恒常性を維持できなくなった状態であり,尿毒症状や溢水,電解質異常などを呈する症候群である.
●急性腎不全による高カリウム血症,肺水腫,高度のアシドーシス,意識障害などは致死的な病態であり,緊急の処置を必要とする.
●多くの場合,急性呼吸不全や急性循環不全などを伴い,多臓器不全の一分症として発症する.原因としては,出血性ショックや外傷,敗血症などが多い.
●慢性腎不全と異なり,原因に対する適切な治療が行われ,腎不全の状態を血液透析などの腎補助療法で乗り切れば,多くの場合は腎機能が回復し腎補助療法から離脱できる.
●一般に急性腎不全は腎前性,腎性,腎後性に分類される.
●腎前性は循環血液量減少や心拍出量の低下などによって尿量減少をきたした状態であり,脱水,出血,心不全,敗血症性ショック,腹部コンパートメント症候群などが原因となる.
●腎性の原因として,急速進行性腎炎などの糸球体疾患,腎動脈の閉塞,薬剤性(造影剤を含む),溶血,横紋筋融解症(ミオグロビン)などがある.腎前性であっても,早期に適切な治療がなされないと急性尿細管壊死を起こし,腎補助療法を必要とする腎性へ進展する.
●腎後性は,尿管や尿道など尿路の閉塞によるものである.
●これまで急性腎不全の統一された診断基準はなかったが,急性腎不全を軽微な腎機能異常から腎補助を必要とする腎不全までの連続した病態としてとらえ,できるだけ早期に診断して腎不全への進展を防止することを企図して,急性腎傷害(acute kidney injury:AKI)の概念が導入され一般に認められつつある.
●AKIは,「48時間以内に血清クレアチニン(Cr)が0.3mg/dL以上あるいはベースラインから1.5倍以上の上昇,または尿量が0.5mL/kg/時以下が6時間以上持続する状態」と定義
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