診療支援
治療

蕁麻疹
Urticaria
林 宗貴
(昭和大学藤が丘病院准教授・救急医学科)

A.疾患・病態の概要

1蕁麻疹の定義1)

●膨疹,すなわち紅斑を伴う一過性,限局性の皮膚の浮腫が病的に出没する疾患である.

●多くはそう痒を伴う.

●通常の蕁麻疹に合併して,あるいは単独に,皮膚ないし粘膜の深部に限局性浮腫を生じるものがあり,それらは特に血管性浮腫と呼ぶ.

●通常,個々の皮疹は24時間以内に消退し,色素沈着,落屑などを伴わない.

2病態

●何らかの機序によって,皮膚マスト細胞(肥満細胞:皮膚・漿膜・血管周囲・粘膜周辺に広く分布する)が脱顆粒して,ヒスタミンなどの化学伝達物質が細胞内に放出されることによる.特に,皮膚組織内にその化学伝達物質が放出され,皮膚微小血管の拡張と血漿成分の漏出が生じ,紅斑や局所的な浮腫(膨疹)が形成され,知覚神経が刺激されて痒みを生じる.

●マスト細胞が活性化する機序としてⅠ型アレルギーが有名であるが,その頻度は数%以下とされる.自己抗体による抗原非依存的な活性機序も知られているが,直接的原因が特定できないことが多い.


B.最初の処置

 蕁麻疹の診断は,視診と問診により確定することが可能で,その治療は原因・悪化因子(表1)の除去とヒスタミンH1受容体拮抗剤(抗ヒスタミン薬)の内服が基本である.しかし,原因について明らかにできないことも多いため,救急医療の現場では症状の軽減を速やかに行い,専門医への受診を勧める.

 救急診療においては,受診の問い合わせも多い.以下のような点に注意して蕁麻疹を主訴とした病態の緊急度を推測して,受診の要否を判断する.

①呼吸困難または喘鳴

②咽頭,喉頭の浮腫(嚥下障害,嗄声など),咳

③顔面,特に口唇・眼瞼の浮腫

 また,出血斑や紫斑を疑う場合は,緊急的な対処が必要なため,受診を促す.

1バイタルサインの確認

 皮膚症状よりもバイタルサインの異常を重視する.

1呼吸困難や血圧低下が認められる場合

 気道確保や呼吸管理,循環管理が優先される.気

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