A.疾患・病態の概要
●慢性心不全とは,慢性的な心筋障害(表1図)により心臓のポンプ機能が低下し主要臓器に十分な血液を供給できない状態で,その多くが肺うっ血や体静脈系のうっ血をきたし,労作性呼吸困難や浮腫などにより生活の質を低下させる.また致死的不整脈も高頻度にみられ,すべての心疾患の終末的病態であり生命予後が極めて不良である.
●慢性心不全の加療中においても過度の塩分摂取などの増悪因子(表1図)により心不全の代償機転が短時間に破綻し急速に病態が悪化した場合は,迅速かつ適切な治療を施すことができるかが生命予後を左右する.
B.最初の処置
いち早く低酸素血症を改善することが最優先で,観察,評価,治療を同時進行に行い少しでも早く呼吸困難を軽減することが大切である.
1バイタルサインのチェックと簡単な病歴聴取
①primary ABCDを確認,診察をしながら,可能であれば簡単な病歴聴取を行う.同時にモニター(血圧,心電図,酸素飽和度)を装着しバイタルサインのチェックを行う.
②必要があれば,即座に応援を要請しBLS,ACLSをためらわず開始する.
2楽な体位の確保
①基本的にFowler位であるが,一番楽になると自覚する体位を確保する.楽な体位の確保によりバイタルサイン(酸素飽和度,心拍数,血圧)の改善傾向がみられることもある.
②右心不全や心タンポナーデの場合は,Fowler位による血圧低下に注意する.
3酸素投与,ルート確保,採血,検査の提出
①酸素投与(リザーバーマスク5~6L/分)開始する.末梢静脈路を確保し採血(CBC,肝機能,腎機能,電解質,CPK,トロポニンT,甲状腺機能,BNP,FDP,Dダイマー)を行い,生理食塩水で補液開始する.
②動脈血の血液ガス分析で電解質,血糖値,代謝性アシドーシスなども同時に評価.
③酸素投与後またはすでに酸素投与されている場合には,経皮的動脈血酸素飽和度(Sp
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