A.疾患・病態の概要
●腎疾患の急性増悪の概念に含まれるのは,以下の病態が考えられる.いずれも,以前の病歴がわからないと,新規発生なのか,急性増悪なのかを鑑別するのは,初診では難しいことも多い.ただし,急性増悪の場合は,早期にその原因を解決すれば,元の状態まで回復することもあるので,鑑別は重要である.
①腎臓そのものの病変(糸球体病変,間質病変),もしくはその原因疾患が増悪した場合.
②もともと腎障害のある患者(慢性腎臓病,chronic kidney disease:CKD)の腎機能が急に低下するような病態の場合:当初は,新たに発生した急性腎傷害(acute kidney injury:AKI,広義の急性腎不全)として対応せざるを得ないことが多い.したがって,AKIの原因となりうるすべての原因は,診断の経過を通じて除外診断する(「急性腎不全」,→).
③急性増悪したと考えられる場合:原因が何かを早急に判断する必要がある.急性増悪の原因としては,原病の増悪以外に,脱水(循環血漿量減少)が最も重要であり(その他,高齢者,糖尿病など),薬剤や造影剤によるものでも,脱水状態ではリスクがさらに高くなる.したがって,最初の段階で,腎前性の要素を徹底的に除外する必要がある.
④電解質異常:腎機能の低下などによる一時的なものではなく,以前から存在していた軽度な異常やその原因になる病態が,何らかの条件で増悪した可能性があり,当座の対応でコントロールできた後に,根本的な原因を検索する必要がある.
B.最初の処置
①当座の対応は,急性腎障害を疑う場合に準ずる.心原性に腎血流量が落ちる原因として,うっ血性心不全,虚血性心疾患などを最初に除外したうえで,循環状態を確保する.
②バイタルサイン,尿量のモニターを開始する.必要があればバルーンカテーテルを留置し,鑑別診断のために最初の尿の検体を採取する(表1図)
③初診
関連リンク
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