診療支援
治療

気管支喘息発作(重積症を含む)
attack of bronchial asthma
河野陽一
(千葉大学大学院教授・小児病態学)

 気管支喘息発作は小児の救急疾患のなかでも頻度の高い疾患である.症状は短時間に増悪することがあり,また普段は発作強度が強くない患者であっても呼吸不全状態で来院することもある.このように緊急性の高い疾患であるため,救急医療の場では,すばやく的確な診断と治療が要求される.


A.小児ならではのポイント

●小児は息苦しさなど発作のレベルを明確に伝えることができないため,発作強度は,動作,会話,顔色,日常生活,食欲,睡眠などから判断する.また保護者の判断で受診することが多いので,保護者には日常の診療において発作強度の判断の仕方をよく指導しておく必要がある.

●乳児喘息(2歳以下)の発作は進行が早く重症化しやすいので,早めに受診させ,症状によっては入院を考慮する.

●テオフィリン薬(テオドール®,テオロング®,ユニフィル®,ユニコン®など)は,乳幼児において痙攣を誘発するリスクがあることから,乳幼児,てんかんや熱性痙攣の既往のある小児には原則禁忌とする.

●小児,特に乳幼児は吸入薬の吸入が十分にできないことがあり,また発作時は内服薬も飲めないことも珍しくない.吸入薬,内服薬,貼付薬,注射薬など薬物の投与法に配慮する.


B.診断の進め方

1鑑別診断

①喘息の典型的な発作は呼気性喘鳴を伴う呼吸困難であり,特に同様の症状が繰り返されている既往があれば診断は難しくない.

②乳児期は,ウイルスによる下気道感染により,喘息と同様の喘鳴を認めることがある.しかし,感染による喘鳴症候群では,明らかな呼吸困難(努力呼吸)は重症感染症例でなければ認められない.また,呼気延長も明らかでない.

③喘鳴に関わる鑑別疾患を表1にあげる.喘息に関連した疾患として,喘鳴や呼吸困難を伴わず,遷延性・反復性咳嗽を主症状とする咳喘息(cough variant asthma)がある.喘息の亜型あるいは喘息前段階と位置づけられており,治療は

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