診療支援
治療

頭部外傷
head trauma
弦切純也
(東京医科大学病院・脳神経外科)

A.病態

●非高齢者(65歳未満)の頭部外傷は,交通事故や労災事故などの高エネルギー事故が受傷機転となることが多く,頭蓋内損傷の病態ではびまん性脳損傷が多い.

●高齢者の頭部外傷は,歩行中の交通事故や屋内外での転倒・転落などの日常生活で生じる比較的軽微な受傷機転が多く,急性硬膜下血腫,脳挫傷,脳内血腫といった局所性損傷の割合が高い.

●50歳以上の急性硬膜下血腫,挫傷性浮腫,脳内血腫ではtalk and deteriorateをきたすことがあり,deteriorate時のGlasgow Coma Scale(GCS)は転帰と相関する.

●受傷後の低酸素,低血圧などは二次性脳損傷に大きな影響を与える.

●高齢者頭部外傷における高次機能障害の改善は若年者よりも遅い.

●重症頭部外傷の死亡率は年齢とともに上昇し,70歳以上の重症頭部外傷は手術の有無にかかわらず転帰不良である.


B.初期診療と重症度判断

1primary surveyと蘇生

①頭部単独外傷の可能性が高いと思われても,治療を要する他部位損傷が否定されるまでは外傷初期診療ガイドライン(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care:JATEC)に従う.表1に頭部外傷合併多発外傷における呼吸・循環管理目標を示す.

②GCSスコア8点以下,あるいはGCSスコアの最良運動反応が5点以下であれば,気管挿管を行う.その際は鎮静薬と筋弛緩薬を用いる.不十分な鎮静は施行時に頭蓋内圧亢進を招くので注意する.

③気道,呼吸,循環の安定化の後,GCS,瞳孔所見,片麻痺を中心に神経症状を診察する.

④脱衣と体温管理を行う.

2secondary survey

1primary surveyの神経症状で,GCSスコア8以下あるいはGCSスコアで2点以上の急速な悪化,瞳孔不同,片麻痺を認めた場合は脳ヘルニア徴候を考慮し,seconda

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