診療支援
治療

脊椎・脊髄外傷
spine and spinal cord injury
大槻穣治
(東京医慈恵会医科大学准教授・救急医学)

A.病態

●脊椎損傷は単独では重篤となることは少ないが,その不安定性から脊髄損傷,特にその半数近くを占める頸髄損傷を合併すると機能障害や生命予後に大きな影響を与える.

●脊椎損傷は約45%が頸椎,40%が胸椎,15%が腰椎・仙骨に発生する.

●呼吸運動は,主に第3~5頸髄(C3~C5)から出る横隔神経に支配される横隔膜と,各胸髄から出る肋間神経に支配される肋間筋により行われる.すなわち上位頸髄の損傷ではそのどちらもが障害され自発呼吸は停止し,下位頸髄~上位胸髄の損傷では肋間筋が障害され横隔膜のみの呼吸(=腹式呼吸)となる.

●心臓は第1~4胸髄(Th1~Th4)から出る交感神経と脳神経である迷走神経(副交感神経)の二重支配を受けているが,この部位より上位の脊髄損傷では交感神経の支配が断たれ副交感神経優位となり徐脈になる.また末梢血管は第1胸髄~第2腰髄(Th1~L2)の側柱から出る交感神経の支配により収縮しているので,その部位より上位の脊髄損傷ではその支配が断たれ末梢血管は拡張し血圧が低下する(神経原性ショック:neurogenic shock).


B.初期診療(重症度判断)

 初期治療の目的は,呼吸・循環の安定と,脊柱の不安定性による二次損傷の予防である.独歩で来院した患者に頸椎・頸髄損傷が疑われる状況(表1)では,損傷を否定できるまでは頸椎カラーで固定し診察する.また救急隊は,脊椎・脊髄損傷を疑った場合は頸椎カラー,バックボードによる全脊柱固定を行って搬送してくる.バックボードの固定解除はまず頭部から行い,体動時に頸椎に過度の力が加わることを防ぐ.バックボード上に2時間以上固定すると褥瘡を発生する恐れがあり,CT施行時や背部観察後には除去する.

 頸椎カラーを装着していても正常可動域の40~80%の運動が可能であり,X線撮影時や移動時などには用手による固定を行う.

 診察は「JATE

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