診療支援
治療

腕の外傷(上腕骨骨折)
upper extremity trauma(fractures of humerus)
宍戸孝明
(東京医科大学准教授・整形外科)

A.病態

●上腕骨は近位端,骨幹部,遠位端の3部位に分けられ(図1),骨折の部位によって病態や治療法などが異なる.

●近位端骨折は中高年者に多く,転倒して肩を打ったり,手をついた時に受傷する.青壮年では交通外傷や高所からの転落で生じる.

●骨幹部骨折では交通外傷,労働災害,転倒,転落,スポーツなどにより直達外力や介達外力が生じ発生すが,投球,やり投げ,腕相撲などで自家筋力の作用が受傷原因になることもある.

●遠位端骨折は転落や転倒により手をついて受傷する.上腕骨顆上骨折,上腕骨外顆骨折,上腕骨内顆骨折に分類される.

●開放性か非開放性かが治療方針や予後に大きく影響する

●高齢者では骨粗鬆症に伴う多発骨折や病的骨折にも注意を要する

●骨折部の腫脹や変形に加え神経・血管損傷を合併する場合には,初期治療に注意を要する.


B.初期診療と重症度判定

1初療室での診察

①開放性か非開放性かを確認する.開放創があればこれを滅菌ガーゼで覆いバイタルサインの確認,輸液路の確保,膀胱カテーテルの挿入,採血などを行う.開放性骨折の場合損傷の程度の判定には開放創の大きさや,軟部組織損傷の程度と骨折部の汚染度から評価するGastiloの分類が一般的である.

②神経血管損傷の有無を確認する.骨折部位と主な神経血管損傷を表1に示す.

2骨折部位・骨折型の診断と初期治療

 X線撮影は少なくとも正面,側面の2方向の撮影を行い,肩関節,肘関節を確認できるように大きめのX線フィルムを使用する.骨折部位と骨折型の診断と,それぞれの初期治療を示す.

1上腕骨近位端骨折

①三角筋部に腫脹,疼痛,運動時痛を認める.X線評価では,Neerの分類がよく用いられる.骨頭,大結節,小結節,骨幹部の4つのsegmentに分け,1cm以上あるいは45°以上の転位があるものを転位型とし,転位骨片の数によりtwo-part,three-part,four-pa

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