A.社会的背景
2009年6月の薬事法改正より登録販売者制度が始まり,第1類医薬品でなければ薬剤師でなくても登録販売者の資格があれば販売ができるようになった.これにより,ドラッグストアチェーンやコンビニエンスストアにおいても一般用医薬品の販売が拡大してきている.一般用医薬品の95%以上が第2類および第3類医薬品に指定されており,24時間いつでも一般用医薬品が手に入りやすい環境が整っている.例えば,医薬品の過量内服を繰り返すために家族が病院から処方される内服薬を管理していたが,患者自身がドラッグストアチェーンにて購入し再び過量内服をするケースも少なくない.また,中年男性のうつ病が増加しており,医療機関を受診せずにドラッグストアチェーンで睡眠薬を購入しているケースもまれではなく注意が必要である.さらには,インターネットを利用した通信販売も盛んであり,海外から個人輸入しているケースも増加している.このような社会的背景から一般薬における中毒疾患も無視できないものとなって来ている.
B.病態の把握と診断・治療の進め方
①一般に手に入れることができる医薬品であるため,少量で重篤な症状を引き起こす成分は少ないが,どんな一般用医薬品においても薬剤アレルギーは起こる可能性がある.アナフィラキシーやスティーヴンス・ジョンソン症候群などには注意が必要である.
②一般用医薬品は配合製剤が多いため,来院の際には,患者・家族や救急隊員に服用した薬剤がわかるように箱や瓶などを一緒に持参してもらうことが重要である.薬剤の成分がわかれば必要な治療法が判断しやすい.
③内服した薬剤名がわかれば,インターネットを利用して検索することで成分は比較的容易に調べることができる.
④薬剤の成分がどんなものであっても,救急外来や救命救急センターにおける初期診療の基本はABCアプローチである.つまり,気道や呼吸・循環を迅速に評価し,
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