A.疾患・病態の概要
●高山病は,吸入酸素分圧の低下による低酸素血症が主病因である.低濃度酸素を呼吸しつづけると,呼吸数増加,脈拍数増加,悪心・嘔吐,めまい,集中力低下あるいは筋力低下といった症状を呈する.高度になると昏睡から死に至る.
●高山病には急性高山病と慢性高山病がある.前者は,非高地に住む者が高山に行ったときにみられ,重症例では肺水腫や脳浮腫が生じる.後者は,標高2,500m以上の高地居住者にみられる長期的な高所適応不全で,多血症と肺高血圧症が主症状をなす.日本で問題になることは多くないが,注意が必要である.
1急性高山病
急性高山病,高地肺水腫および高地脳浮腫は最も重要な高所関連疾患である.広義の急性高山病の特徴と症状を表1図に示す.過去に罹患したことのある者は再び発症しやすく,重症例は若年者に多くみられる.
1急性高山病(acute mountain sickness:AMS)
①急速に標高2,500m以上の高所に達すると,順化していない者の多くに頭痛が生じる.新しい高度に到達して4~24時間の間に発症しやすく,2~3時間後には消失することが多い.高く登るほど,速く登るほど生じやすい1).発症率に男女差はないが,高齢者に多く,慢性疾患保持者は高リスクである.数%は重症化する2).
②本態は軽度の脳浮腫と考えられている.低酸素血症に伴う脳血管の拡張,脳血流の増加,および血管内圧上昇による透過性の亢進が原因とされる.
2高地肺水腫(high altitude pulmonary edema:HAPE)
①高度3,000m以上,新しい高度に到達して24時間以上してからの発症が多く,男性に多い傾向がある.安静時の呼吸困難,頻呼吸,頻脈など肺水腫による症状が顕性化する.
②なお,高地脳浮腫の症状を伴わなくても脳圧が亢進していることがある.
3高地脳浮腫(high altitude cere
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