胸腔内には生理的にごく少量の胸水が存在するが,通常はほとんどの容積を肺が占めている.胸腔内は腹腔内と異なり,胸郭および横隔膜の呼吸性運動が肺の換気に伝わるように陰圧に保たれている.最初に穿刺を行ってから胸腔ドレナージを行うか,最初から胸腔ドレナージを行うかは,患者の状態・施設の状況・個人の能力に応じて選択する.
A.適応,合併症
1適応
①胸腔穿刺は,胸腔内に貯留した空気や液体などの診断および治療に用いる.通常は胸部X線で,立位または坐位で正面像と側面像をチェックした後に行う.
②胸腔穿刺の第1の緊急適応は緊張性気胸に対してである.心停止の切迫した状態を回避し,次の胸腔ドレナージまでの時間稼ぎを行う.緊張性気胸の診断は,気胸の一般的所見(胸郭の左右差,胸郭運動の左右差,患側呼吸音の減弱,打診上の鼓音,肋骨骨折の轢音,皮下気腫など)に加え,ショックとその他の特徴的な身体所見(頸静脈怒張,気管・喉頭