診療支援
治療

外出血止血
emergency hemostasis
島崎淳也
(大阪大学医学部附属病院・高度救命救急センター)
小倉裕司
(大阪大学医学部附属病院・高度救命救急センター・講師)

A.適応,合併症,ピットフォール

①外傷,手術などによって組織に損傷が生じた場合は,ほとんどの場合出血を伴う.出血の程度は,損傷を受けた部位,損傷の種類や程度により異なる.軽微な出血であれば自然止血するが,自然止血しない出血に対しては止血処置を行う必要がある.

②抗凝固薬・抗血小板薬を内服していたり慢性腎不全で透析を受けている場合は,軽微な出血でも止血に難渋するケースが少なくないため注意を要する.

③創深部からの出血の場合,一見軽微な出血にみえても創を展開すると大出血することがあり,特に頸部・鼠径部など主要血管が体表近くにある部位の創には注意を要する.人手を集め,必要に応じて輸液・輸血の準備や気道確保を行う.

④多発外傷患者などでは,外出血の止血処置に集中するあまり他部位の損傷の評価や蘇生処置を遅らせてはならない.このような場合はまず圧迫止血により一時止血を図り,全身管理を優先する.

⑤患者血液を介した感染を防止するため,手袋・ガウン・ゴーグルなどによる標準予防策を実施する.


B.インフォームドコンセントでの注意点

①出血をきたしている患者の多くは不安な精神状態にあるため,現状とこれから行う止血処置を説明することで患者の不安を取り除く.

②バイタルサインが不安定な場合や,致命的な大出血をきたしており一刻を争う場合は,止血処置を最優先する.


C.一般的な手技

1直接圧迫法

①すべての出血に対してまず行うべき基本手技である.外出血の止血処置としては最も基本的かつ効果的な処置である.

②出血点を用手的に直接,あるいはガーゼなどで圧迫する.動脈出血でも,主幹動脈からの出血でなければ10~20分の圧迫で止血可能である.

③四肢の出血の場合は,圧迫と同時に患肢を心臓より高い位置に挙上することで,より高い止血効果をもたらす.

④多くの出血は圧迫止血で止血可能である.圧迫止血が成功しない理由のほとんどが,不十分な圧迫

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?