診療支援
治療

コンパートメント内圧測定,減張切開
compartment pressure,decompression incision
島崎淳也
(大阪大学医学部附属病院・高度救命救急センター)
中川雄公
(大阪大学医学部附属病院・高度救命救急センター)

Ⅰ.コンパートメント症候群とは

①コンパートメント症候群とは,骨・筋膜・骨間膜により区画されるコンパートメント(筋区画)の内圧が上昇し,筋や神経の循環障害をきたす病態である.

②外傷や虚血の他,熱傷やギプスによる外固定,激しい運動でも生じることがある.筋区画が存在すれば身体のどの部位にでも発生しうるが,前腕と下腿が好発部位である.

③症状として,発生部位の腫脹・激しい疼痛・運動障害・知覚障害が出現する.区画内の筋の他動的な伸展や,筋把握により強い疼痛を訴える.末梢動脈の拍動は末期まで保たれるため,初期診断には有用でない.

④コンパートメント症候群に陥った場合,4~6時間で筋組織の壊死が始まり,12時間で神経組織の不可逆的変化が生じるといわれている.


Ⅱ.コンパートメント内圧測定


A.適応,合併症,ピットフォール

①コンパートメント内圧測定は,コンパートメント症候群の診断の補助のために行う.

②コンパートメント内圧はコンパートメント症候群診断の客観的指標とはなるが,あくまでも補助診断の一つであり,診断は臨床症状を最優先すべきである.

③臨床的にコンパートメント症候群が明らかな場合は,必ずしもコンパートメント内圧測定を必要としない.しかし,意識障害を伴う多発外傷患者などの場合,臨床所見のみでコンパートメント症候群を診断するのは不可能であるため,コンパートメント症候群を疑った場合は速やかに内圧測定を行うべきである.

④正常のコンパートメント内圧は10mmHg以下であり,30mmHgを越すとコンパートメント症候群を引き起こす可能性がある.

⑤内圧測定の絶対的禁忌はないが,感染の可能性がある部位には行わないようにする.


B.準備するもの

 水銀柱血圧計,点滴用延長チューブ,三方活栓,20mLシリンジ,18G針,生理食塩水


C.コンパートメント圧測定(needle manometer法)の手順

①準備物品を図1

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