診療支援
治療

膿瘍排膿(切開,ドレナージ)
incisional drainage
廣田龍一郎
(星ヶ丘厚生年金病院・形成外科部長)

A.適応,合併症,ピットフォール

①救急外来での適応は,発赤,熱感,腫脹,疼痛など炎症による自覚症状を伴なった局所的な皮下膿瘍に限定される.頻度としては表皮嚢腫(粉瘤),毛嚢炎,爪周囲炎,毛巣洞などが大部分であるが,悪化した褥瘡でも救急外来での切開排膿が必要となることがある.

②部分的に皮下膿瘍が存在するとしても,一肢全体に炎症所見が存在し壊死性筋膜炎を疑うような場合や,既往歴から骨髄炎の存在を疑う場合などには安易な切開は禁物である.専門医,指導医と連絡を取り対応する.

③侵襲的な処置であるので膿瘍の存在だけで炎症による自覚症状がない場合には,翌日(週明け)の専門外来の受診を勧める.

④合併症として出血や排膿による除圧での血圧の急激な変動,切開部周囲に存在する神経や血管などの重要臓器の損傷などが考えられる.切開の際には,膿瘍の周囲,下床に何が存在するか頭に描きながら行う.

⑤顔面や身体露出部の切開では,後々瘢痕(きずあと),拘縮(引きつれ)が問題となる場合もある.


B.インフォームドコンセントでの注意点

①前述したように侵襲を伴う処置であるため,手術に準じて同意書を取るべきである.

②処置により自覚症状は改善するが,切開排膿は根治術ではなくあくまでも対処療法であり,翌日以後の専門外来の受診が必要不可欠であることを十分に説明する.

③出血,感染,局所麻酔薬によるショックなどの一般的な注意のほか,将来的な根治術の可能性,切開創の瘢痕拘縮の可能性についても説明する.

④切開排膿の必要性については十分に説明すべきであるが,原疾患についての詳しい説明は後日の専門外来に委ねるほうが無難といえる.


C.手順

1準備

①局所麻酔手術に準じて血圧計,SpO2モニターはあったほうがよい.膿瘍の大きさにもよるが,小手術用のセットを用意しておく.帽子,手袋,ガウンなども局所麻酔下手術に準じる.

②洗浄することを想定して,ベッ

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