今日の診療
内科診断学

全身倦怠感
奈良 信雄


全身倦怠感とは

■定義

 全身倦怠感(fatigue)とは,身体的,精神的に「だるい」と感じる自覚症状を指し,疲労感,易疲労感などとほぼ同義に用いられる.

 健常者でも,過度の肉体的・精神的労働を行うと疲労が残り,倦怠感を感じる.これらは休息をとれば自然と回復するもので,“生理的疲労”と呼ばれる.休んでも回復しない場合,あるいは疲労を感じさせるほどの労働もしていない場合に,病的な倦怠感と考える.

■患者の訴え方

 患者は,「だるくてたまらない」「疲れがとれない」「起きていられない」などと訴える.たとえば急性肝炎の急性期には,「口を開くのもつらい」ほど強い倦怠感がある.

 なお,「気力がない」「活力が出ない」などといった訴えもある.ただし,これらはむしろ無気力感を示し,器質性疾患というよりも精神神経疾患の可能性が高い.

■患者が全身倦怠感を訴える頻度

 全身倦怠感を主訴として来院する患者は比較的多く,外来患者のほぼ1〜3%を占める.また,外来受診患者のほぼ25〜40%は倦怠感を訴える.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

 患者が疲労感を訴える場合,それが肉体的な原因であるか,精神的な疲労であるかをまず考える.

 身体的な疲労は,組織の低酸素,低血圧,老廃物蓄積,ホルモン分泌不全,低栄養などによる細胞レベルでの代謝活動の障害が原因となる.これらを引き起こす病態としては図3-8に示すようなものがあり,その原因疾患として主なものを表3-11に示す.

 精神的な疲労は異常な精神活動が原因となるもので,うつ病や神経症が基礎疾患になる.

■病態・原因疾患の割合

 30〜40%が精神的疲労で,生理的疲労が20%程度,器質性疾患による疲労が30〜40%程度である.2週間以上にわたって全身倦怠感が続く患者が25%程度あり,これらは器質性疾患に基づくことが多い.

 病態・原因疾患の頻度とその臨床的重要度を図3-9に示す

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