今日の診療
内科診断学

成長障害
遠藤 逸朗
松本 俊夫


成長障害とは

■定義

 ある年齢の平均(M)および標準偏差(SD)に基づく身長の評価により,M±2SDを基準範囲とみなす.一般にM−3SD以下を明らかな成長障害(failure to thrive)とし,M−2SDとM−3SDの間は病的低身長の疑いと判断する.

■患者の訴え方

 低身長以外に特異的な訴えはない.本人の自覚,あるいは家族・学校健診などにより指摘を受けて受診することが多い.

■患者が成長障害を訴える頻度

 身長の度数分布曲線は正規分布を示すと考えられるので,統計学的にM−3SD以下の低身長は1,000人に対して約1.5人,M−2SD以下は1,000人に対して約24人存在することになる.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-17)

 小児期の発育・発達には遺伝的要素,栄養,内分泌などが複雑に関与しており,さまざまな内的因子あるいは外的因子の異常によって成長が障害される(表3-23)

 成長は軟骨細胞の増殖の結果であるので,その過程に最も直接的に関与する成長ホルモン(growth hormone; GH)/インスリン様成長因子-Ⅰ(insulin-like growth factor Ⅰ; IGF-ⅠまたはソマトメジンC)の内分泌系が最も重要な因子と考えられる.GHは視床下部から産生されたGH放出ホルモン(GH-releasing hormone; GH-RH)の刺激を受けて下垂体前葉から分泌され,主に肝臓におけるIGF-Ⅰの産生を促進する(図3-18).GH作用の大部分はIGF-Ⅰを介するものと考えられている.成長障害が認められた場合,まずGH/IGF-Ⅰ系の評価を行うことが最も重要である.これによりGH分泌不全性低身長と(広義の)非内分泌性低身長との鑑別が可能となり,治療方針も決定される.

 表3-23に挙げた疾患群のなかでも,栄養障害は肝臓でのIGF-Ⅰの産生を低下

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