今日の診療
内科診断学

眼瞼下垂
山下 一也
小林 祥泰


眼瞼下垂とは

■定義

 眼瞼下垂(blepharoptosis)とは,上眼瞼挙筋や瞼板筋の筋力低下に伴う上眼瞼の挙上不全をいう.眼瞼の挙上運動や位置を制御する,大脳皮質から筋までの運動系のいずれのレベルの障害によっても起こる.

■患者の訴え方

 「まぶたが下がる」「まぶたが重い」「まばたきがしにくい」などの訴えが多い.重症筋無力症では,症状に日内変動があり,午後から夕方になると症状が増悪する.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-73)

 健常者では,通常,上眼瞼は角膜の上方を約1.5mm覆っているが,眼瞼下垂があるとそれ以上角膜を覆い,瞳孔まで覆うと視界に影響を及ぼす.ただ,高齢者ではそれ以上の眼瞼の下垂がみられることがある(加齢性眼瞼下垂).

 眼瞼下垂には,図3-73に示すように種々の原因があるが,眼瞼下垂は眼瞼を挙上する筋である上眼瞼挙筋や上瞼板筋の障害によるものである.上眼瞼挙筋は横紋筋で動眼神経の支配下にあり,上瞼板筋は平滑筋で交感神経の支配下にある.上眼瞼挙筋の麻痺では高度な眼瞼下垂が起こりうるが,上瞼板筋の麻痺(Horner症候群)では下垂の程度は軽い.

■病態・原因疾患の割合

(図3-74)

 多くの原因のうち比較的頻度が高いのは,動眼神経麻痺とHorner症候群で,次いで重症筋無力症,眼筋ミオパシーであり,それ以外は稀である.動眼神経麻痺の多くは一側性であり,後交通動脈の動脈瘤と糖尿病や高血圧によるものが多い.

 ただ,眼瞼下垂の手術療法を受けた例の原因疾患については,欧米の報告をみると,先天性下垂が59〜97%,平均72%と多く,後天性下垂は3〜41%,平均28%である.後天性下垂は手術にならない例が多いので,必ずしも眼瞼下垂の割合を正確に示すとはいえない.

診断の進め方

■診断の進め方のポイント

●眼瞼下垂の原因には,さまざまなものが含まれるが,診断の進め方のフローチ

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