今日の診療
内科診断学

顔面痛
小林 祥泰


顔面痛とは

■定義

 顔面痛(facial pain)とは,顔面に生じる痛みの総称である.神経痛様の痛みが多い.

■患者の訴え方

 患者は「突然刺すような鋭い痛みが走る」「電気が走るような痛み」「焼けるような痛み」と訴えることが多いが,「目の奥付近の激しい痛み」「強い鈍痛が続く」「漠然とした鈍痛が続く」と訴えることもあり,原因によって異なる.三叉神経痛では話をしたり,冷たいものを食べたり,ものを噛んだり,顔の一部に触ると「痛みが走る」と訴えることが多い.

■患者が顔面痛を訴える頻度

 専門科によってその頻度は大きく異なる.すなわち,歯科口腔外科や耳鼻科では顔面痛の頻度は内科に比べて高い.内科で多い特発性三叉神経痛(tic douloureux)に限ってみると,Rochesterの疫学調査による年齢・性調整後の年間発症率は人口10万人に対して4.7人であり,女性で5.9人と男性の3.4人に比べ有意に高率で,男女とも50歳以後に有意に増加する.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-101)

 患者が顔面痛を訴える場合,それが特発性三叉神経痛や群発頭痛などの機能的なものか,炎症や腫瘍による症候性かをまず考える必要がある.特発性というのは,原因が不明なものである.その多くは機能性と推測されるが,一部に器質性の原因が隠れている可能性もあり,十分な除外診断が必要である.しびれの有無は重要である.

 顔面痛をきたす主な原因疾患を表3-105に示す.

■病態・原因疾患の割合

(図3-102)

 特発性あるいは症候性三叉神経痛は,内科で頻度が高い.耳鼻科など他科においては当然原因疾患の頻度が大幅に異なり,顔面痛全体における原因疾患の割合は不明である.特発性が最も多いが,症候性では帯状疱疹(後)によるものが比較的多い.また,特発性とされているもののなかに,動脈硬化性血管蛇行による神経圧迫が原因のものもかなり

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