嗄声とは
■定義
嗄声(hoarseness,かれ声)は音声障害のうち,声帯およびその付近の異常状態によって発声時の声の質が異常になることをいう.一般には,失声(無声,ささやき声),気息声(息漏れのある声),粗糙声(だみ声),無力声(力のない声),努力声(力み声)なども含めて嗄声ということが多い.
■患者の訴え方
患者は,「声がかすれる,出ない,ふるえる」「ガラガラ声になった」「高さがおかしい」などと訴える.反回神経麻痺の患者は「会話中疲れやすい」と言うことがある.
■患者が嗄声を訴える頻度
内科外来における嗄声の頻度を示した報告はないが,上気道炎や感冒様症状の1つとして嗄声を訴える患者まで含めると多数にのぼる.
症候から原因疾患へ
■病態の考え方
(図3-123)図
嗄声の発生機序には,大きく分けて次の3つがある.
①両側声帯がよく合わない(運動障害,両側性または片側性の反回神経麻痺,ヒステリーなどの機能性のものなど).
②両側声帯間に異物が挟まる(喉頭異物,声帯ポリープ,結痂性炎症など).
③声帯の質的変化(急性・慢性喉頭炎,喉頭腫瘍,声帯の萎縮,声帯の緊張低下など).
これらを引き起こす直接の原因には,声帯の形態異常,運動異常,炎症,腫瘍などがあり(表3-122)図,間接喉頭鏡検査により鑑別が可能である.所見を認めた場合は,さらに詳しい診断を耳鼻咽喉科専門医に依頼するのがよい.
反回神経麻痺は,声帯運動を司る反回神経(迷走神経の一分枝)が周囲の腫瘤(肺癌,食道癌,縦隔腫瘍,転移リンパ節,大動脈瘤など)から圧迫障害を受けることによって起こるものであり,重大な病気の存在を警告するものととらえる必要がある.
左側反回神経は走行上の特異性から右側よりはるかに侵されやすい.また,甲状腺,食道,肺の手術や外傷による神経損傷が反回神経麻痺の原因となる場合もある.
全身麻酔下の手術後に嗄声が起こること